リミナルスペースは「誰かがいたはずなのに、誰もいない」という奇妙な感覚を持つ空間の美学です。無人のショッピングモール、深夜の廊下、終わりの見えないプール――日常の場所でありながら、人の気配を完全に欠いた「境界空間」の写真・映像・CGが世界的なインターネット・ミームへと発展しました。ホラーからアート、Webデザインまで幅広い領域で注目され、現在もZ世代を中心に不気味さとノスタルジーを愛好するカルチャーとして定着しています。
リミナルスペースとは?
リミナルスペースは、空っぽで不気味なほど誰もいない場所を描写したインターネット発の美学(SNS発の美学・世界観系スタイル)です。名称はラテン語で「閾値(しきいち)・境界・移り変わり」を意味する「limen」に由来する心理学・人類学用語「リミナル(Liminal)」から派生しており、本来は「過渡期の空間」を指します。インターネット・ミームとしての広まりは、2019年に画像掲示板「4chan」へ投稿された「The Backrooms(バックルーム)」の写真をきっかけに、RedditやTikTokを通じて世界へと拡散したのが大きな転機となりました。
リミナルスペースが持つ不気味さは、「見慣れた場所なのに、そこにいるべき人間が誰もいない」という認知的違和感に起因すると考えられています。環境心理学の観点からは建築の「不気味の谷」現象として研究対象にもなっており、ゲーム・映画・現代アート・Webデザインにおいて「非現実的な没入感」を演出する手法として高く評価されています。
主な視覚的特徴
- 色蛍光灯の黄みを帯びた白、くすんだベージュやグレー、夜のプールを照らす冷たいブルーなど、彩度が低く生気を感じさせない人工的な色調
- 形無限に続く直線の廊下、格子状の天井タイル、繰り返されるドアや柱、誰もいない夜の遊び場の遊具など、本来そこにあるはずのものだけが残る無機質な造形
- 構図1点透視図法による強い奥行き感、人間を完全に排除した無人・無機質なレイアウト、非対称でありながら奇妙な対称性を感じさせる構図
- 書体表現に文字を使う場合は、1990〜2000年代のレトロなサンセリフ体、古い案内標識のシステムフォント、監視カメラのタイムスタンプ風デジタルフォントなど
- テクスチャ安っぽいオフィスカーペット、湿ったコンクリート、タイルの光沢、フラッシュ撮影による不自然な白飛び、荒い画質のデジタルノイズ
- 雰囲気日常性と非日常性の乖離。「見覚えがあるのに、どこか決定的に間違っている」という、建築の不気味の谷とも呼ぶべき心理的違和感の視覚的喚起
配色パレット
このスタイルを象徴するカラーパレットです。実際のWebデザインやグラフィック制作の参考にお役立てください。
このスタイルを体現するゲーム・映画・建築
- ゲーム『The Backrooms 1953』などのBackrooms系インディーゲームは、無限に続く黄色い壁紙と蛍光灯ノイズに満ちた空間を探索するというゲームプレイで、リミナル・スペース的・バックルーム的美学と結びつけて語られることの多い作品のひとつ
- 映画映画『Vivarium』(2019年)は、完全に均一で無限に広がる不気味な新興住宅地に閉じ込められた夫婦を描いた作品で、その街並みやインテリアデザインが、リミナル・スペースの美学と結びつけて語られることがある映画のひとつ
- 音楽映画『Mid90s』(2018年)のサウンドトラック(トレント・レズナー&アッティカス・ロス)は、日常の「エアポケット」を切り取った雰囲気で、リミナルスペース的なノスタルジーと孤独感の表現例として言及されることがある
- 建築首都圏外郭放水路(埼玉県)など、圧倒的なスケールを持ちながら人間が日常的に生活しない巨大地下施設の写真・映像は、境界空間としてのリミナルスペース美学を体現する建築事例として紹介されることが多い
AI生成プロンプト
このスタイルのビジュアルをAIで生成するためのプロンプトです。 英語版はMidjourney・Stable Diffusion向け、日本語版はGemini・Adobe Fireflyで 使いやすい形式になっています。そのままコピーしてお使いください。
英語プロンプト
日本語プロンプト
Webデザインへの応用ヒント
リミナルスペースは、コンセプチュアルな建築・インテリアデザイン事務所のポートフォリオ、謎解き・脱出ゲームの公式サイト、インディーズ映画・舞台のプロモーションサイトと特に相性の良いスタイルです。一方、デザイン全体に「冷たさ」や「歓迎されていない雰囲気」が漂うため、賑わいや親しみやすさを重視する一般的なECサイトやコーポレートサイトでは離脱の原因になる可能性があります。ナビゲーション要素が空間の背景に溶け込まないよう、視認性の確保が必須です。美学的に近いドリームコアやミニマリズムとの組み合わせが語られることが多いです。



